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建築設計チーム

私の見解:建築と旅行

14-12-2009

 


 

以下のことに関するあなたの個人的な意見を聴かせて下さい。

-建築ツーリズムの重要性
-建築家(そして建築の学生)が旅行をすることの重要性
-建築の役割と、建築は都市にどのような付加価値をもたらすか?

 

 

どんなキーワードなら、新しい建築の夢を、現実にすることができるだろうか?

私たちが旅をするのは、私たちが建築をつくる勇気と可能性の見方を変えるためにだ。

新しい旅のキーワードは?

【Q1】

         新しい旅とはなにか? 

【A1】

私たちは、1つの建築が、それが属するかもしれない対象、言い換えれば、国家や、地域の形式、世界的流行といった対象から、外れている、隔絶しているとき、対象に対して批判的であるというものにパワーを感じる。

 

金と権力のアクセントとは無縁なところへ向かうことができる。

 

旅なら、権力の外側にいられる。

【Q2】

            それはなにを意味するのか?

【A2】

政府に憤慨やるかたなく、憂いを払いのけ、各人の人生の闇を持ち、その中に希望があるのだと理解している…、そして、あきらめに呑み込まれることに抗って、私たちは、“自分たちの建築”をつくろうとしたのだ。

 

昨日のこと…、オーストラリアの写真家が突然私たちのところへやって来た。私たちの建築の写真をとりたい、と。「イースタンのプロジェクトで、祇園町屋が大好きだ。あれはいつできる?、え?、あれはアンビルトか?、なんてこった。あれは傑作だよ、なんてこった」、笑わせてくれる。「紋所の家」は、チュニジアの建築の高等学校で、授業に使われているとメールがある。ドイツの学校やオランダの生徒が京都へ来るとよく訪れる。どこで見たのか聞いてもいつもはっきりしないのだが。ブルガリアのオンライン・マガジンを、おそらく一人で主宰しているだろう、レジスタンスのような風貌の男が、「水平の家」を取り上げると、数日後、そこからアメリカ中へ広まった。ギリシャの女性詩人が、「スリットの家」を詩的な文章で綴ると、それがロンドンに飛び火し、欧州へ、南米へ、アジアへ拡大した。イラクの女性は「西八条邸彩丹」を愛していると、バラ絵文字のラブレターを送ってくる。模型をつくるから図面が欲しいと書き添えてある。バングラディッシュの男は、僕の国は通信が制御されている、どうかplease sir send us some references and books. 本を送って欲しい。ある感性の拡大があるのだ。

 

訛りの強い者たちの見えない共同体!

 

【Q3】

         あなたにとって旅とはなにか?

【A3】

私たちの旅は、偉大な建築彫像を嘆賞するのではない。遠い旅路の目的地は、絵画にもまだ描かれていない。教養書や百科事典にも記載がない。都市のガイドブックは気づきもしない。地球の歩き方にも、旅行代理店のパンフレットにもない。

 

私たちの向かう場所は、保養地ではない。ヴァカンスでもない。各都市のデザイン・ウィークやヴィエンナーレを自覚なくさすらう取材クルーとは違う。私たちの旅は違う。心を打たない都市論を確認してマイナーチェンジをしている傍観者的評論家と、私たちの眼と身体は全く違う。

 

【Q4】

         新しい旅のキーワードは? 

【A4】

昨日まで一緒にいた人が、今日は食卓の席につかず、ふっと旅立つ。人はなぜ旅を追うのか?、なぜ夢想するのか?

あなたがあなたの内面の国境や境界線を巡って、歴史の袋路へ入って行き、かつてなにかによって破壊された世界の無へ入っていく。その旅の衝動はなにか?

 

私たちの、新しい旅のキーワードは?

 

それは“私の眼ざし”、最後の袋路へ入って行く。中心から外れてゆく私の眼差し。私が接触する人々の上に、私の側から光を注ごうとする。最後の袋路に新しい側面を加えようとする。別の眺望点を。新しい眼の行動学を自覚すると、旅が目差すところは違ってくるものなのだ。

 

旅は、すべては他の誰かによって見尽くされているなどという堕落をうけ入れないものだ。偉大な建築も、映画や写真のショットも、街や建築ガイドやイメージも、すべて参考になる一事例に過ぎないと自覚することだ。

 

喩えるなら、

 

・北京の開発に追いつこうと思っている天津のプロジェクトの混乱を見たときに思った、…プロジェクト

とは、どれもこれも国や資本にここへ金をよこせ、と言っているみたいだ。

・メキシコシティでトラブルを起こしている連中は、今夜も恋人のために屋根の上に違法で電気を引っ張

っている。屋根の給水塔に入れる水のタンクを積んで来るトラックに乗ってるのはおれの友だちだ。そ

のうちの1人は、明日、国境を超えるはず。ここから南へ少し下ると、政府が、トウモロコシの束が積

まれたランチョ(農場)の裾野に、2LDK250万円の偽物のバラカン色の公団住宅を建て続けている

が、一体だれが住むっていうんだ。

・おれかい?、おれはイーストサイドで働いていても、住まいはブルックリンさ、恋人についていっ

 た“昨日の美術館”で見たアートのくだらなさに頭ががんがんする…、わかるだろ?、おれは電車に乗っ

 ている。鉄橋の下へ降りて行く。街の中へ消えていく。

・日本のとある田舎町。夕刻、楽しい活気に驚く。日本人は夕方おとなしく家へ入る。どこも町は、さび

しい。ここは違う。こどもたちがフットボールをする声。異国の言葉。ラテン人の移民(外国籍住民)

たちだ。工場から父親が帰ってくる。古ぼけたマンションの窓から妻が声をかけて、かれは町へ出てい

く。子どもは遊んでいる。町の失われた活気が呼び起こされ、地元の日本人たちもその活気に参加して

ゆく。私はいつまでも町の幸せの響きに時を過ごしていた。

 

人間が生きる場所で、私たちは将来の建築や街を心に浮かべる様々な能力を涵養(かんよう)するのだ。

 

【Q5】

         新しい旅のキーワードは? 

【A5】

1. 大建築家というものの消滅 → その代わりに → それぞれの場所の建築に興味を持つ

2. 普遍的な主流というものの消滅 → その代わりに → 主流が猛スピードで変化している

3. 一握りの建築家の価値観の優先順位が下がる → その代わりに → 第3国の建築家の台頭。かれらの建

 築に、実際に使う楽しさがはたで見ていて連想できる。

 

【Q6】

         人々はまだ建築を必要としているか? 

【A6】

今、私たちが設計している家は傑作になるだろう。施主は、アジアの混血で、女性だ。ローマのトレステベレ(Trastevere)のフラットにも、ニューポートの丘にも、シンガポールにも住んだ。今度は日本だ。「お金は使っちゃってないのよ」。しかし底知れず、亡命的で、それゆえ貴族的な彼女の嗜好を、いかにして安く、それでいて斬新につくるかに苦心している。そういう時代さ。

 

建築を求める人々が変わってきているのだ。貴族なのに金がないとか、日本なのに日本離れしているとか、金はあるのに出さないとか、最高の贅沢は辺境地に住むことだとか、逆に都心の質素な静けさなのだとか、2時間で行ける小さい安い別荘が最終地点だとか、恋人と過ごすだけの食卓1つの空間をこそ、わが城だと、空想するとか…、こうなれば、建築は、ポップな課題をもつようになる。

 

新しい旅のキーワードは?

 

金がないことにあえぐ人々は、今後、全世界の人々ということになるかもしれない。中流の、あるいは、かつて富豪だった人々、のし上がってきた人々が、一面的でない新しいインパクトを求めているところは?

【Q7】

         世界中で、行ってみる価値のあるもっとも重要な現代建築を10か所教えて?

【A7】

私たちが遠い旅路の目的地に選ぶ建築は、がぜん違ってくる。

 

どっかのだれかが名作と言っている有名建築が目的地ではない。私が欲しいのは、権力の外がわにあるもの。等身大の詩。

 

私たちが行ってみるべきだと思う建築は、

 

1、曼殊院「八窓軒」――私たちが見つけた傑作の茶室、まだだれもそれを評価できない。

場所:京都

 

2、フランチェスコ・ヴェネチア「ジベリーナの美術館とシークレット・ガーデン」――イタリアン・ファンタジー!

場所:ジベリーナ市,イタリア

 

3、Alvaro Siza(アルバロ・シザ)の「ボア・ノバのティーハウス」――ヨーロッパの涯のイメージ。

場所:ポルトガル

 

4、ガンジーの小屋。――インドのdeep pop!

場所:マハーラーシュトラ州、ワルダ,インド

 

5、キューバ、ハバナのブンタ要塞――その奥底から響くディープ・ルンバ!

場所: ハバナ,キューバ

 

6、万里の長城――自己を守る建築の最高峰。

場所:中国

 

7、フィリックス・キャンデラの諸作品――貧困の中で輝く自由。

場所:メキシコ

 

8、石峰寺――伊藤若冲の最晩年の彫刻がごろごろころがっている、だれも知らない不思議な寺。

場所:京都

 

9、オスカー・ニーマイヤーの「ナラ・マンダドーリの家」と「ダーシー・ヒベイロの家」――オスカー・ニーマイヤーの2つの海の家。

場所: カップ・フェラ半島,フランス

場所:リオデジャネイロ市、マリカー,ブラジル

 

10、EASTERN design officeの諸作品――さあ、新しい認識のしかたを教えてあげる! 

EASTERN design officeを発見して!

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